東京地方裁判所 昭和34年(行モ)5号 決定 1959年4月22日
申立人 辛敬植
被申立人 東京入国管理事務所長
訴訟代理人 花村吉人
主文
本件申立はこれを却下する。
理由
本件申立の要旨は、「申立人、昭和十九年より現在に至るまで引続き本邦内に居住する外国人にして外国人登録証を所持しているものであるに、相手方は申立人が昭和二十二年から同二十四年までの間において法定の許可を得ることなくして本邦に入国したもので、旧外国人登録令第十六条第一項第一号に該当するものとして、昭和三十二年十月二十四日退去強制令書を発した。しかしながら、申立人は右のような不法入国の事実はなく、従つて、右退去強制令書は無効のものであるから申立人はこれが無効確認の訴を提起した。しかし、右退去強制令書の執行を受ける場合においては、申立人は右無効確認訴訟の遂行にいちじるしい支障が生じ、又、申立人が本邦内において有する家庭的、社会的地盤が破壊され、申立人の信用、名誉も失墜し、その結果申立人は償うことができない損害を受けることになるから、これが執行の停止を求めるため本申立に及んだ。」というにある。
よつて按ずるに、申立人が執行停止の必要性として主張する事由の内本案訴訟遂行の支障の点は、訴訟には代理人を選任して訴訟行為を為さしめることができるのであるし、又、その他の点についてはこれを認めるに足るべき疏明はなく、その他、右退去強制令書の執行により生ずべき償うことのできない損害をさけるため緊急の必要があると認められるような疏明資料もない。
よつて本件申立はその理由ないものという外ないからこれを却下することとし、主文の通り決定する。
(裁判官 地京武人 石井玄 越山安久)